【 建 設 業 】主体性ある会社作りで、新規顧客の獲得を

 「2月に入って、(仕事が)ストップの状態ですわ!」 と、 こぼす業者さんが多いなか、年商2億弱だが、この10年、特別に良くもないが、悪くは 決してない建設会社(知事許可・建設一式を取得している。)がある。

 業務の大半は、戸建改築か集合住宅の一室改装の元請工事で、地域に根ざした営業と原案の設計図面は社長自らが引くというスタイルを今も変わらずに守っている。
 本当は、これこそ21世紀の建設業者のあるべき姿かと以前から思っていたが、先の 見えない大不況期を迎え、この会社はいよいよ真価を発揮されるものと確信している。

―――最近のこと。 ある設計会社の社長が「相談事がありまして・・・」といいながら事務所にやって来た。そして、挨拶代わりの世間話もほどほどに、「で、今日は・・・」と尋ねると、その社長は唐突に「500万円未満の工事なら、建設業の許可は要りませんよね。」と訊いてきた。 その会社は、設計だけでなく、小規模ながら施工も続けており、どうやら、これから本腰を入れるべきや否や、ということを相談したいようだ。

 私は笑顔で「もちろん、請負代金が500万円未満なら許可は要りません。」と答え た。 そして、安堵しながらコーヒーをすするその社長に「 しかし、これからの建設業は許可の取得に限らず、事業のビジョンとスタイルをしっかりと持つことが重要ではないですかね。 そうすれば、建設業許可がどういう位置にあるかが見えてきますよ。」と釘を刺した。 その社長は、怪訝な表情で目を見開いた。

 堺屋太一の近未来小説「平成三十年」のなかに、ある経済誌の「21世紀になって 最も変化した産業」というアンケートの結果が載っており、建設とパチンコと自動車という古くからの産業が上位3位を占めたとの内容に興味を引いた。

 建設は人口減少と建物の老朽化でリフォーマー化し、パチンコは大企業参入と新機 種出現により大規模アミューズメント化、自動車はハイブリッドや超小型エコカーの普及と世界的な企業連合の組み替えがあったという。 そして、この小説は平成30年までに建設業者は最盛期の3分の1の数にまで減少したと描いている。

 平成30年でも存続している建設業ってどんなものかという設問に対し回答するなら ば、冒頭で、21世紀にいよいよ真価発揮されるものと紹介した建設業者のスタイルが 想起される。それは、ゼネコンピラミッド型の現状システムから距離を置いた自立のスタイルを持っており、この自立する“主体性”こそが、これからの建設業にとって欠かせないものと思えてならないからだ。



【主体性って何だ!】
 それでは、この主体性とは一体何か――。 まず何より大切なことは、その会社が自身で顧客を確保することを真剣に志向すること。これが主体性確立の前提条件といってよい。 そして、一般技能を越えたノウハウを有し、顧客の要望に対する解決策を複数用意できるだけの能力を養っていくこと。 これが主体性確立の必要条件である。

 「うちは、元請業者になれる業種じゃない。」という会社は多いし、確かにそうした業種もある。しかし、少なくとも28業種中10数業種は、自身で直接顧客を確保しようと思えばできる業種であり、知恵と勇気を絞って独自の営業スタイルを創り出すことである。

 また、業種追加の申請をしなければならないのなら、先ずは追加する業種を地道に体験することから始めることである。ビジョンがあり、本気になれば、道は開けるものである。それをしないのであれば、元請会社と対等の立場で交渉していけるだけの自身の強みを磨き上げ、不当な取引条項を廃した下請契約書をきっちりと締結していく本気の努力が求められる。

 当ホームページの新着ニュースでも取り上げているが、「下請適正取引ガイドライン」を政府が建設業、運送業はじめ業種ごとに策定し、その普及を図っている。 当事務所もまた、悪しき商慣習を脱し、適正な下請取引が着実に発展していくことを願うとともに微力ながら貢献していきたいと思っている。
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